4月19日(水)
池田理代子です。
昨年の10月ごろから、合唱団員の募集を始めた『第十回バチカンより日本へ』の公演、終了いたしました。
森家さんが中心となって、昔の『真夏の第九』のメンバーたちに声をかけて下さったのですが、今年は例年にも増して多くのお申し込みがありました。
また、前半の第一部に、私が脚本を書いて薮田翔一さんが作曲をしてくださった『女王卑弥呼』の抜粋が演奏されるなど、私にとっては本当に思い出に残る舞台となりました。
思えば遡ること20数年、歌舞伎俳優の中村福助さんからの発案で、福岡アクロスでの上演となる予定のオペラでした。
ただ、あまりにグランドオペラであり、予算的に無理ということでいったん話は立ち消えとなり、また福助さんの御病気もあったりして、紆余曲折の末、この日まで
時間がかかってしまいました。
イタリアの作曲家に会いに行ったり、上演委員会を立ち上げて頂いたり、電通まで入ったり、色々と試行錯誤の上、ようやく若い作曲家の薮田翔一さんから、「オペラの作曲をしてみたいので、いい脚本はないでしょうか」といったお話が伝わってきて、漸く、この度の一部上演に至ることができました。
最初は福助さんが卑弥呼を演じられ、歌い手が影で歌うという趣向だったのですが、この度の卑弥呼は、東京オペラプロデュースで何回か演出もさせていただいたソプラノの江口二美さんと、私は心に決めていました。
そして、卑弥呼にお告げをする神の役は、偶然にも最近お近づきになった辰巳真理恵ちゃんの天使のようなイメージがぴったりで、本当に運命を感じさせられました。
卑弥呼を愛してしまう敵国・狗奴国の武将、阿多の君には榛葉さん、やんちゃばかりして顰蹙を買う乱暴者の卑弥呼の弟・スサノオには村田と、ちょうど役者がそろったのも、私には運命的なものを感じられる、今回の舞台でした。
因みに、卑弥呼の衣装を縫ってくれたのは、秘書の山口さんです。
まだまだ重要な登場人物も多いのですが、これから作曲が進むごとに、折あるごとに少しずつ上演を重ね、再来年あたりには、全編を通して上演したいと思っています。
ただ、一方で、この10年の間には、後期高齢者となり、また長いコロナもはさんで、合唱団員の中にはすっかり人間が変わってしまったり、記憶があいまいになって、訳の分からない文句を言って来たり、いったん買ったチケットを、「キャンセルできません」と書いてあるにもかかわらず、平気で突き返して来たりと言った人が増え、私と森家さんと秘書の山口は、本当に時間を取られ悩まされました。
ても、昔からの仲間たちは、皆さん気持ちよく素晴らしい舞台を作ってくださいました。
ただ、歳月の力は残酷で、悲しいものがあることを実感させられました。
村田は、今日から静岡、仙台、陸前高田、いわきといった東北公演に旅立ちました。